「海外所見善本碑帖録」
去年の秋、馬成名先生より著作の進呈を受けました。
馬成名先生は中国書画碑帖の世界的な鑑定家です。
1987年よりクリスティーオークションに勤務され、
2009年に退職されるまで中国書画碑帖部門にて要職についておられました。
ニューヨークや香港でのオークションの折々には温かく迎えて下さり、
その豊富な知識を披露していただきました。
最近はお目にかかる事も少なくなり、アメリカの山の中で執筆活動に勤しんで
おられるとのお話でしたが、この本を書いておられたのですね。
P77には2001年2月私が馬成名先生を京都の大谷大学の図書館にご案内して
《信行禅師碑》の拓本を見に行った事が書かれています。
忘れないでくださってありがとうございます。
「海外所見善本碑帖録」には馬成名先生が世界中で見聞された碑版法帖の
名品が書き綴られています。学問とはこういう地道な研究なのだとつくづく
思います。
内表紙には毛筆で為書きが認められています。お人柄の表れた美しい書ですね。
ロバート・ハットフィールド・エルズワースの思い出 ①
去る2014年12月11日クリスティーズジャパンにて行われたロバート・ハット
フィールド・エルズワースコレクションの日本プレビューのご案内をいただきました。
ロバート・ハットフィールド・エルズワース氏(1929年〜2014年)は著名な東洋美術の
コレクターでありディーラーでした。氏の2000余点のコレクションのオークションが
今年3月にニューヨーククリスティーズで行われる予定でありそれに先立ったプレビュ
ーが東京で開催されたのです。
ロバート・ハットフィールド・エルズワース氏は私にとって強く思い出に残る人物の
一人です。氏に関する最初の記憶は1992年12月のことです。
1992年12月私はニューヨーククリスティーズで一回目の李氏(啓巌)羣玉斎旧蔵碑版法帖
のオークションに参加するため初めてニューヨークを訪れました。アメリカに行くのは
初めてでしたが、当時ニューヨーククリスティーズで東洋美術の主席キューレターを
勤めていた黄君実氏と馬成名氏の手厚いサポートをいただくことができました。
おかげで中国美術特に私が専門とする古代書画は当時ニューヨークが売買の中心地
でしたが、そこに集う王季遷氏や王芳于氏を始めとする多くのコレクターや
ディーラーの方々と知り合うことができました。
1992年12月のニューヨーククリスティーズのオークションに出品された李啓巌旧蔵の
碑版法帖のうち南宋拓石鼓文、明拓天發神識碑、宋拓黄庭経、宋拓懐素千字文
(群玉堂帖)等の素晴しい名品がロバート・ハットフィールド・エルズワース氏に
よって落札されたのです。
そしてこれらの落札品は1996年8月に中国文物出版社から「エルズワース善本碑帖
コレクション選」として出版、ほぼ同時期に作品は北京故宮博物院で展観され、
その後上海博物館への売却に繋がっていくのです。