黒田玉洲展
日毎春の訪れを感じられる季節になってまいりました。皆様方にはますますご清祥のことと拝察申し上げます。このたび黒田玉洲先生の作品展を開催することになりました。先生との出会いは約三十年前、今と変わらず誠実な学究の徒というお姿でした。現在は大地真央さんのご主人として有名な世界的デザイナーの森田泰道さんと、新宿にあるカフェダイニングの建築に関わった時のことです。石門十三品の拓本を店内正面に備えたその店は数十本の縦型照明に書をアレンジしたシェードを巻き付けることになり、どうやってそのシェードを調達するか頭をひねっていた時です。ふと黒田先生のことが思い出されました。そこでお願いして画廊の床に宣紙を数十枚敷き詰め、快く開通褒斜道刻石を臨書していただいたことが懐かしく思い出されます。先生の作品達は微かな息づかいを重ねつつ伝統に留まらず、身の回りの言葉や物たちを穏やかに導いて、やがてその姿は密やかな仏心を帯びて作品となっていくようです。ささやかな画廊での展示ではございますが、皆様のお運びをお待ちしております。